福井嶺北は、現在1年生のチームだ。
4月に硬式野球を本格的に始めてからまだ半年。公式戦では体格も大きく、経験も3倍の上級生たちとたたかうことになる。中学生で1年の学年差は圧倒的だ。
しかし、試合が始まればそんな事情は関係ない。何とか最後まであきらめず食らいついてくれれば、と思った今年の秋季大会2回戦。
初回を無失点で帰ってきたとき、それだけでまずは大喜びだった。その後も、先発の牧野君が、学年差を忘れるような堂々としたピッチングで6回まで被安打5、失点1の好投。その間に何度もピンチを迎えたが、バックも好捕、好送球の連続で本塁を守り抜いた。守備が終わってベンチに帰ってくる度、選手たちからまるで優勝したかのような歓声が巻き起こった。
3回には単打、四球、四球で満塁に。特に3番廣部君が9球粘って四球をもぎ取ってからベンチは大いに沸いた。続く龍崎君が6球目を叩いて2点適時打を放つと、一気に流れを掴んで4点を先制。得点はこの回だけだったが、その後を守り切り、1年生だけの新チームが公式戦で初の勝利を飾った。純粋に1年生だけのチームが公式戦で実績あるチームに勝利したのを見たのも聞いたのも、私は初めてだった。
何より嬉しかったのは、最初から最後まで選手の集中力が途切れなかったこと。ボールパーソンをしている選手からも、ずっとグラウンドに響き渡る大きな声が飛んでいた。まさに全員でつかんだ勝利だった。
思えば、近年まで体格では欧米に劣った日本人が、いち早く諸外国と対等にたたかえるようになった球技が野球だった。先人は、パワーではかなわなくても、チームワークと緻密なプレーで世界の階段を昇って行った。大げさになるが、野球というスポーツの面白さを中学1年生の選手が改めて堪能させてくれた。
1年生の実力は、客観的に見ればまだまだやはり1年生のレベルだろう。それでも、挑戦していくのが嶺北の真骨頂であってほしい。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」である。