日本高校野球連盟など、全国高校野球選手権大会運営委員会及び理事会は、夏の甲子園大会の中止を正式に決定した。
選手や関係者の安全確保を優先するのは当然だが、爆発的感染が減速し、学校や経済活動が少しずつ戻ってきていることを考えると、最終判断はもう少し後でも良かったのではないか、という気持ちは正直ある。加えて、プロ野球選手会が経済的支援を申し出る中で、地方大会まで中止になったのは残念としか言いようがない。
全国大会が中止でも、今後の状況を見ながら、地方大会はあきらめず、3年生の最後の活躍の場を作ってほしかった。ただ、地方大会は都道府県判断で独自開催する道は残っているらしい。開催のため協力できることはしていきたい。
今年の高校3年生は、私たちチームの5期生にあたる。
5期生は、福井嶺北創立初めて1学年で10人以上が集まり、参加できる大会も一気に増えた。個性豊かで、野球に対してひたむきな子ども達ばかりだった。何より練習好きで、時間があればバットを振っている連中だった。それまで以上に、何とか勝たせてやりたい、と思わずにはいられなかったが、中学生時代は私達の力不足で結果を出してやれなかった。
それでも、彼らの姿勢は、後輩に受け継がれ、その後の福井嶺北の文化となった。6期生、7期生は、一緒に練習し戦った先輩を誇りに思っているに違いない。
卒団後も何かと交流があり、高校野球の世界に笑顔で旅立った彼らが、相変わらず野球が好きで、日々猛練習に取り組んでいることを聞いていた。今年は甲子園という言葉を聞くたび、彼ら一人一人の顔を思い浮かべたものだ。
「花よりも花を咲かせる土になれ」
松井秀喜を育てた星稜高校の名将山下監督の有名な言葉を今味わっている。山下監督は、1年生には礼儀を、2年生に努力の大切さを、そして3年生には周りへの感謝を教えてきたという。松井が5打席連続敬遠されても、冷静にチームプレーに専念したのは、勝負の結果より人間性を大事にする指導があってのことだ。
花は咲いても、その美しさは、はかない。しかし、土の生命力は、永遠である。
彼らが無念を乗り越えて、野球や人生でこれからどんな花を咲かせるか、楽しみに待っているし、待っている資格のある人間でありたいと思う。